この度、染色家・柚木沙弥郎さんがヨーロッパ、インド、日本各地を旅して描いた、生前最後の自選作品集『旅の歓び、旅の色彩』(平凡社)の出版を記念いたしまして、滔々のギャラリーと民藝館南店の2拠点で、原画展と書籍の販売会を開催いたします。
「旅の歓び、旅の色彩」は、絵画作品70点と手製の旅のアルバム帖で構成された、柚木さんの創作の源に触れる感動と発見がつまった一冊。また、柚木さんが生前に自らの意思で出版を企画した最後の作品でもあります。
本展は、現在 滔々のある場所で、32年に渡りギャラリーを運営されてきた「クラフト&ギャラリー幹」(1985~2017年)のこけら落としとして、柚木さんの作品展が行われたご縁により開催の運びとなりました。
当時のオーナーである三宅幹子さんと柚木さんの貴重な写真なども展示しておりますので、どうぞこの機会にご高覧ください。
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柚木沙弥郎 Samiro Yunoki
染色家、版画家、絵本作家。型染めによる染色、版画、絵本、切り絵、立体などさまざまな作品を手がけ、100歳を超えても意欲的に創作活動を続けおられた柚木沙弥郎さんが、2024年1月31日、享年101歳で他界されました。
東京生まれの柚木さんですが、ご実家は倉敷市玉島の旧家でした。幼い頃から倉敷の地を訪れるたびに、その風土や文化に触れて育ったといいます。
戦後の一時期、柚木さんは大原美術館に勤務します。その中で、初代館長の武内潔真氏(1888〜1981年)から民藝の思想を学び、その理念に基づく作品に触れる機会を得ました。日常生活に根ざした美しさ、民衆的な工芸の価値を学んだことは、後の柚木さんの作品に大きな影響を与えています。
同館で出会った芹沢銈介氏の型染めのカレンダーに強い感銘を受け、染色に対する関心を深めるなか芹沢氏に弟子入りし、型から染めまでの染色の技法を学びました。
略年譜
1922年 東京生まれ 実家は倉敷市玉島の旧家
1942年 東京帝国大学文学部美学・美術史科に入学
1946年 大原美術館に勤務 柳宗悦の提唱する「民藝」に出会う
1947年 芹沢銈介に師事し、染色家を志す
1950年 女子美術大学講師となる
1955年 銀座のたくみ工芸店で初の個展を開催
1972年 女子美術大学教授に就任
1987年 女子美術大学学長に就任
2024年 1月31日永眠 享年101歳